設計施工一括方式とは?設計施工分離との違いを解説
設計施工一括方式とは?まずは仕組みをわかりやすく解説
「設計施工一括方式という言葉を聞いたけれど、普通の建設工事と何が違うのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
設計と施工をまとめて発注する方式ですが、単純に「設計と工事を同じ会社に頼む」というだけではありません。発注者が工事を進める方法そのものに関わる重要な仕組みです。
結論からいうと、設計施工一括方式とは、設計と施工を一つの契約として一括して発注する方式です。一般的な設計施工分離では、まず設計を行い、その設計図書をもとに施工会社へ工事を発注します。一方、設計施工一括方式では、設計と施工を同じ受注者が一体的に進めます。
例えば、工場の新築工事で「この用途の建物を建てたい」という要求条件を発注者が提示したとします。設計施工一括方式なら、受注者は設計段階から施工方法や材料、工程などを考えながら設計を進め、そのまま施工まで担当できます。
設計者と施工者が別々に動く場合より、施工現場のノウハウを設計へ反映しやすい点が大きな特徴です。
国土交通省も、設計・施工一括発注方式について、施工者が持つ固有の技術やノウハウを設計に活用できる発注方式として整理しています。特に、施工技術と設計技術を一体で活用することが適切な工事で活用されています。
なお、設計施工一括方式は「デザインビルド」と呼ばれることもあります。建設業界で発注方式を理解するうえでは、まず「設計と施工を別々に発注するのか、一体で発注するのか」という違いを押さえておくと分かりやすいでしょう。
設計施工分離との違いは?発注から完成までの流れを比較
設計施工一括方式を理解するには、従来から多く採用されてきた設計施工分離方式との違いを見るのが近道です。最大の違いは、設計と施工を同じ受注者が担うのか、それとも別々の主体が担うのかという点にあります。
設計施工分離では、発注者が設計者に設計を依頼し、設計図書が完成した後に施工会社を選定するという流れが基本です。設計者と施工者がそれぞれの立場から業務を行うため、役割や責任の区分を明確にしやすいことが特徴です。
一方、設計施工一括方式では、受注者が設計から施工までを一体的に担当します。そのため、施工方法を踏まえて設計を検討したり、施工段階での手戻りを減らすための工夫を設計段階から盛り込んだりできます。
例えば、施工会社が「この形状では現場での施工に時間がかかる」と判断した場合、設計段階から施工しやすい納まりを提案できます。
現場を知る施工者の意見を早い段階で取り入れられることは、設計施工一括方式ならではの強みです。
ただし、設計施工一括方式だから必ず工期が短くなる、あるいは必ず工事費が安くなるとは限りません。工事の条件や契約内容、施工者の技術力によって効果は変わります。発注方式は「一括なら有利」と単純に判断するのではなく、工事の特性との相性を見ることが重要です。
実務上は、設計段階で条件がどこまで固まっているかも重要です。国土交通省のガイドラインでも、設計施工一括タイプは公示段階で仕様の前提となる条件が十分に確定している場合に適用する考え方が示されています。
設計施工一括方式のメリットは?コスト・工期・責任を整理
設計施工一括方式のメリットは、単に契約を一本化できることだけではありません。設計と施工を一体的に検討できることで、工事全体を効率化できる可能性があることが大きなメリットです。
1つ目は、施工者の技術やノウハウを設計に反映しやすいことです。施工会社は、実際に現場でどのような順序で工事を進めるのか、どの材料を使えば施工しやすいのかといった実務上の知識を持っています。これを設計段階から活用できます。
2つ目は、設計と施工を並行して検討しやすいことです。例えば、大規模な建物で「少しでも早く完成させたい」という要望がある場合、施工方法を考慮した設計によって工期短縮を目指せるケースがあります。
3つ目は、発注者から見た責任の窓口を一本化しやすいことです。設計者と施工者が別々の場合、施工上の問題が発生した際に「設計上の問題なのか、施工上の問題なのか」を確認する必要があります。設計と施工を一括して契約していれば、受注者側で両者を調整しやすくなります。
ただし、ここには注意点もあります。責任が一元化されることと、発注者の負担がすべてなくなることは同じではありません。発注条件や要求水準が曖昧なまま一括発注すると、後になって「想定していたものと違う」という問題が起きる可能性があります。
例えば、発注者が「できるだけ安く、早く建てたい」とだけ伝えても、どこまでの性能や仕上がりを求めているのかが明確でなければ、受注者との認識に差が生じます。そのため、設計施工一括方式では、発注時点で要求条件やリスク分担をできるだけ明確にしておくことが重要です。
設計施工一括方式のデメリットと注意点は?向かない工事も解説
設計施工一括方式にはメリットがある一方で、すべての建設工事に適しているわけではありません。特に重要なのが、発注者が求める条件と、受注者が提案する設計内容をどこまで明確に整理できるかという点です。
例えば、土地の条件や既存建物の状況、関係機関との協議内容などが十分に分かっていない段階で一括発注すると、設計を進める途中で前提条件が変わる可能性があります。そうなれば、当初想定していた工事費や工期に影響することもあります。
また、設計と施工を同じ受注者が担うため、発注者側から見ると、設計内容を第三者の立場からチェックする仕組みが重要になります。設計施工一括方式を採用する場合でも、発注者側が要求性能や品質、コストなどを確認する体制は必要です。
そのため、設計施工一括方式は、例えば施工者独自の高度な技術を活用したい工事、施工方法と設計を一体で検討するメリットが大きい工事などと相性が良いと考えられます。
反対に、発注者が設計内容を細部まで決めたうえで施工者を選びたい場合や、設計と施工をそれぞれ独立した立場から確認することが特に重要な工事では、設計施工分離のほうが適している場合があります。
つまり、重要なのは「設計施工一括方式が優れているか」ではありません。工事の目的、条件、リスク、求める技術、発注者側の管理能力を踏まえて、適切な発注方式を選ぶことがポイントです。
建設業界で発注方式を学ぶ際は、「一括発注だから簡単」と考えず、設計・施工それぞれの役割とリスクがどう変化するのかまで見ると、実務への理解が一段深まります。
設計施工一括方式が向いている人・工事とは?最後にポイントを整理
ここまで見てきたように、設計施工一括方式は、設計と施工を一つの契約として発注し、受注者の技術やノウハウを設計段階から活用できる発注方式です。設計施工分離と比べて、設計と施工の連携を取りやすいことが大きな特徴です。
特に理解しておきたいポイントは次のとおりです。
- ・設計施工一括方式は、設計と施工を一括して発注する方式
- ・設計施工分離では、設計と施工を基本的に別々に発注する
- ・施工者の技術やノウハウを設計段階から活用しやすい
- ・工期短縮やコスト縮減につながる可能性がある
- ・条件が曖昧なまま発注すると、変更リスクが高くなる場合がある
- ・すべての工事に適しているわけではなく、工事特性との相性が重要
建設会社で働く方にとっても、発注方式の理解は決して発注者だけの話ではありません。施工管理や設計、積算、営業など、さまざまな仕事で「この工事はどのような条件で発注されているのか」を理解することが、現場を動かすうえで役立ちます。
例えば施工管理であれば、単に図面どおりに工事を進めるだけでなく、設計段階から施工性を考える視点が求められるケースがあります。発注方式を知ることは、建設プロジェクト全体を見る力を身につけることにもつながります。
「設計施工一括方式について、もう少し詳しく知りたい」「公共工事の発注方式を整理したい」「自分の仕事がプロジェクトの中でどんな役割を担っているのか知りたい」という方は、関連する発注・契約方式についても続けて学んでみてください。
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